大学編入:学年首席でも全落ち?!天才Nくんの悲劇

大学編入:学年首席の「天才」Nくんの場合

高専在学中、Nくんは不動の学年一位でした。
理数系ができるだけではありません。
彼はテストの度、教科書を一言一句丸暗記できるほどの、凄まじい記憶力を持っていました。
どの教科も、満点でないほうが珍しいぐらいでした。

彼の周りには、彼に勉強を教えてもらいたがるクラスメイトが集まりました。
ちょっとした「Nくん軍団」です。
Nくんは「こんなのもできないのかよw」とバカにしながらも、面倒見のよさをみせていました。

Nくんには同じ部活に所属するPくんという親友がいました。Pくんは学力ではNくんに及ばなかったものの、カリスマ性があり、ファンの多い学生でした。
「天才」Nくんと「人気者」Pくんのコンビは、学年で知らない者はない存在でした。

 

Nくんの転落 周囲の手のひら返し

自身の頭脳に絶対的な自信を持っていたNくん。
5年生からは、授業の出席を減らし、ひたすら受験勉強に専念しました。
そして、都市部の一流大学しか受験しませんでした。

夏が終わり、秋になりました。
驚いたことに、Nくんはどこの大学にも合格できていませんでした。
Nくんの進路は、練習台として受験していた専攻科だけでした。

「Nくん軍団」のメンバーたちは、彼に対して腫れ物に触るような扱いになりました。
受験前は、いつも同級生に囲まれていたNくんでしたが、校内に1人でいる姿が増えました。
中堅大学から合格を得ていたPくんも、「Nは高望みしたからだ。Nのようにならなくてよかった」と手のひらを返す態度になりました。
有名人だったNくんの転落は、学校中で囁かれました。

それでも、Nくんは学校に来ざるをえませんでした。試験勉強のために前期で欠席を増やしたため、これ以上、欠席すると、優秀な彼でも単位を落としてしまうのです。
教室の隅に、ぽつんと座るNくんは、まるで亡霊のようでした。

 

起死回生の繰り上がり合格

11月末、受験校の一つから、繰り上がり合格の連絡が届き、Nくんのつらい日々は突然、終わりを告げました。
一流大学への進学が決定したNくん。ようやく笑顔が戻ってきました。
しかし、過去のように軍団を引き連れることはなくなりました。親友Pくんとの仲も、元のようになることはなかったようです。

 

天才Nくん 何が悲劇を生んだのか?

Nくんは最終的に希望通りの進路を得ましたが、失ったものも多かったです。どうして苦しむことになったのでしょう?
 

自分の位置を正確につかめなかった

高専生には全国統一模試がありません。そのため、高偏差値で進学実績のよい高専でトップクラスにいると、なんとなく全国的にも上位にいる気がしてしまいます。
しかし、学生の質は毎年違うのが現実です。難易度が低いとされる高専から全国トップレベルの学生が出る年も、明石のようなトップ高専が進学実績不振の年もありうるのです。
 

一流大学の人気学科は首席の学生でも狭き門

全国に高専は50校あまりあり、その1校1校に学年トップがいます。
学年1~3位だけ拾い出しても、150人以上になります。
その人数の割に、一流大学の人気学科の募集人数は少ないです。
受験校を決める前に、首席の学生なら「もし自分が50位だったら」3位なら「150位だったら」と最悪の場合も想定してみるといいでしょう。